津波が来れば自分たちの街は水没する――。南海トラフ巨大地震の発生で被災が想定される高知市沿岸部にある町内会が、そんな危機感をもち、山間地の集落と「疎開」を前提とした交流を長く続けてきた。13年間紡いだ関係は自治体を動かし、念願だった広域避難訓練が20日、実現した。
きっかけは、多くの集落が津波にのみ込まれた2011年の東日本大震災だった。
当時、高知市二葉町で町内会の自主防災会役員(現会長)だった西村健一さん(70)は、1946年の「昭和南海地震」を経験した町内の年配者から、将来に備えて、集団疎開も可能な疎開先を探すよう求められた。
二葉町は浦戸湾に近く、周囲を河川に囲まれた市内の中心部にあり、標高が1メートルに満たない場所が集中する。
市によると、最大級の南海トラフ地震が発生すると、これらの地域は津波と地盤沈下で長期浸水が発生43日後まで続く想定だ。昭和南海地震でも、市街地の浸水の解消に約1カ月かかったという。
町内会のつてを頼りに、西村さんらが向かったのが西へ約40キロ離れた山間部の高知県仁淀川町。2011年に同町の2地区で地元住民と交流会を開いた。
「日本のマチュピチュ」で出会い
だが、住民の温かい心情に触れた一方で、同町の過疎化や高齢化にも直面。「長く交流できる活発な住民グループがなかなか見当たらなかった」と西村さんは振り返る。
そんな中、出会ったのが仁淀…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル